エルメスエヴリンの革修理（色補修）
【大阪府　Y様】

エルメス
エヴリンの革修理
【大阪府　Y様】

2025/08/18

作業金額33,000円（税込）
作業期間1ヶ月
修理部位表面全体

ご依頼の背景とお品物について

今回ご依頼いただいたのは、エルメスの人気モデル「エヴリンTPM（ボックスカーフ／赤）」です。コンパクトで実用性に優れ、ミニバッグとして高いファッション性を持つTPMは、幅広い世代から支持されています。

素材のボックスカーフは、エルメスを代表するレザーで、上品な艶と滑らかな質感が魅力です。一方で非常にデリケートなため、角スレや色褪せが目立ちやすく、定期的なメンテナンスが欠かせません。

今回のお客様も長年ご愛用され、特に角の擦れや全体の退色が気になるとのことで「元の鮮やかな赤を取り戻したい」とのご希望から、当店へ色補修・メンテナンスをご依頼いただきました。

修理前の状態: エルメスを象徴する人気モデル「エヴリンTPM（ボックスカーフ／レッド）」のレザーバッグ。今回ご依頼いただいたのは、深みのある美しい赤色のボックスカーフレザーを使用したモデルで、カジュアルなサイズ感と上品な素材感が魅力の逸品です。エヴリンTPMは、コンパクトながら存在感があり、普段使いからフォーマルまで幅広く活躍するエルメスの名品として人気を誇ります。

しかし今回のお品物は、長年のご使用により以下のような経年劣化が目立っていました。

『バッグ四隅のスレと色落ち
使用頻度の高い角部分には摩耗による擦れが生じ、赤の色味が薄れて下地が見える状態でした。』

『外装全体に広がる黒ずみや薄汚れ
　特にボディ下部やフラップ裏など、手に触れる機会の多い箇所に黒ずみやくすみが目立ち、発色の美しさが損なわれていました。』

『ショルダー付け根やフチ部分のツヤムラ
　光の当たり方によって、部分的にツヤが失われている箇所が見受けられました。』

修理内容: エルメスの定番人気モデル「エヴリンTPM（ボックスカーフ／レッド）」。高級感のある艶やかな赤のレザーは、見る人の目を引く存在感がありつつも、デリケートなボックスカーフゆえにスレや色ムラが目立ちやすい特徴があります。当店では、エルメス・エヴリンTPMのボックスカーフ素材に特化した補修技術を活かし、以下の6工程で丁寧に修復作業を行いました。

①クリーニング｜表面のくすみ・汚れ除去
ボックスカーフ専用の低刺激クリーナーを使用し、全体のくすみ・手垢・薄汚れを丁寧に除去。特にストラップの付け根や角部分、フラップの内側などに溜まった汚れは、革の質感を損なわないよう慎重に処理しました。

② 調色（レッドカラーの色づくり）｜
エルメスの赤は発色が鮮やかで繊細なため、周囲の退色具合や艶感と調和するよう、顔料を何度も微調整しながら色を再現。自然で違和感のない赤に仕上げるため、熟練の技術を駆使して調色しました。

③ 下処理・アンカーコート｜塗料の定着をサポート
革の表面に微細な整えを施し、塗料がしっかり定着するようアンカーコートを塗布。これにより補色後の色持ちや耐久性が向上し、長期使用に適した下地を作ります。

④ 下塗り｜補色のなじみを重視
赤の顔料を数回に分けて薄く下塗りし、補色箇所と周囲の境界を丁寧にぼかしてなじませます。これにより自然なグラデーションが生まれ、補色感を目立たせない仕上がりが可能になります。

⑤ 本塗り｜色ムラなく均一な艶仕上げ
本塗りでは、鮮やかな発色とボックスカーフ特有の艶を再現しながら、スレのあった部分も含めて全体を美しく統一。上質なレザーにふさわしい、深みのある赤色に整えました。

⑥ トップコート｜色持ちと艶を長く維持
仕上げにトップコートを施し、摩耗や紫外線による退色から革を保護。ボックスカーフ本来の上品な艶を損なわず、マット過ぎずテカリ過ぎない絶妙な仕上がりに調整しました。

エルメスエヴリンTPMは、小ぶりで使いやすくも素材の繊細さから経年劣化が目立ちやすいバッグです。今回のように、ブランドに精通した職人が色補修を行うことで、美しさと耐久性の両立が可能になります。

職人のコメント: エヴリンTPMに使用されているボックスカーフは、艶感が魅力の一方で非常に繊細な素材で、ちょっとした摩擦でもスレや色ムラが生じやすく、補修の難易度が高いレザーです。特にレッド系カラーは色の再現性に注意が必要で、深みのある赤を表現するため、顔料の調合には細心の注意を払いました。また、補修後も自然な光沢と柔らかさが保てるよう、艶感と耐久性のバランスを重視したトップコートを施しています。革本来の美しさを損なうことなく、鮮やかなレッドがよみがえった仕上がりとなりました。